おはようございます。
山中です。
今回は、去る11月7日~8日に高知新港に来航していました社団法人航海練習所所属の練習帆船、「海王丸」の船内見学に行ってきましたよ~。
ちなみに寄港時の日程としては、11月7日(土曜日)はセイルドリル(操帆訓練)のみ、僕が船内見学をしてきたのは11月8日(日曜日)の一般公開となります。
なお、この海王丸の取材にあたり、大山君から「山中さん、艦船模型作ってるんだから、お船好きなんですよね。海王丸取材してきてくださいよ」的なオファーがあり、
(そんな、僕がいつも艦船模型作ってるからって、お船やったら何でもええってわけやないんやで・・・。ここはガツン言うたろ・・・(心の声))
「 はい、喜んでっ!!! 」
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高知市 種崎・海王丸
そんなこんな経緯で、やってきました高知新港。
「月の名所」と「坂本龍馬の銅像」で有名な桂浜から言えば、東向かいにあたります。
浦戸大橋を渡れば、車で5分程度の位置です。
前日より雨天だったのがいろいろと気がかりでしたが、僕が付く頃にはタイミングよく雲の切れ目から太陽が見え始め、ほぼ真横から美しいプロファイルを捉えることができました。
海王丸は、縦帆と横帆を組み合わせた4本のマストを持ち、バーク型という帆船に分類されるそうです。
また、ディーゼルエンジンとスクリューによる自走も可能ですので、純粋な帆船ではなく「汽帆両用船」とでも呼ぶべきでしょうか。(古い呼び方かもしれませんが)
海王丸といえば、何年か前の台風時の座礁事故を覚えている方もおられるかもしれませんが、その跡形は微塵も見えずとてもきれいに修復されているように感じます。
ちなみに、現在の海王丸は2代目となります。初代海王丸は昭和5年に建造され、富山県のみなとオアシス海王丸パークに現在も展示されているとか。
乗船タラップの前では、実習生の方でしょうか?オレンジのレインジャケットを着た方達がにこやかに歓迎してくれました。
乗船して順路に進んですぐにある、「海図室」。
出港後、船の進路や速力を海図に記録し、現在位置を把握するための重要なセクション。
GPSがあるからとはいえ、機器の故障などを考えるとやはり必要な技術であることに代わりはありませんよね。
右舷後部甲板から、船首に向かって。右手の頑丈そうなデリックに固定されているボートの船尾が一際目を引きます。
ちらっとボート先端に「18 PERSONS」の文字が見えますが、18人乗りってことでしょうかね。
また、海図室のある構造物船尾側の壁面には、後述の帆走舵輪から見えるように傾斜計が設置されていました。
陸の上を走る車と違い、船は足元の海面が目くるめく変化しますので、転覆しないためにも現在の傾斜角を把握することは大事なんですね。
船尾にあるミズンマストを下から見上げたところ。
他の3本のマストよりは短いのですが、それでも高~い!
帆走時に帆を操る船員さんたちは、この網状のロープを伝ってマストの上に登っていくわけですが、慣れるまでは足がすくむんだろうなぁ・・・。
船尾にある帆走用舵輪。
船体が大きいですので、大きな船体を動かそうとすれば舵板は大きくなります。
大きい舵板は航行時に水の抵抗を大きく受けますので、舵の角度を変えるためには大きな舵輪が必要なわけですね。
とても・・・大きいです。
あと、舵輪にしろなんにしろ、2個あるものが多いです。
航行装置の故障は命に直結するものでもありますので、おそらく予備として用意されているものだと思われます。
海図室のある構造物に上がる左舷側の階段には、ロープが張られて立ち入りが制限されていました。
この立入禁止プレート、よく見られる金属製や樹脂製などではなく木製で、こういうところはたまに乗るフェリーなんかとは違うなと感じます。
左舷側から船内へと続く階段の入り口。
乗船タラップ同様、ここでも船員さんたちが笑顔でお迎えしてくれました。
扉の裏側には、防水性を高めるためのパッキンと、たくさんのノブが見えてとても興味深いですね。
船内階段。木材で丁寧に仕上げられていて、とても高級そうに感じます。
急な階段ですので、万が一に備えて何人もの船員さんたちが見守ってくれていました。
士官(上級船員)食堂。
白い布カバーがかけられ、ゆったりと座れる椅子をはじめ、壁やカーテンなどの調度が豪華に感じられます。
船内の脱出経路案内図・・・。甲板各層の平面図に矢印書き込んだだけやないか~い、と心の中でツッコんでしまったのは内緒。
この平面図のある廊下には個室の士官室があり、扉は開いてロープが張られているだけで中が見えるようにはなっていました。
・・・さすがに、私物らしきものも置いてある個室なので撮影は控えます。
次の部屋は先の士官食堂よりも大きな部屋になっていまして、たくさんの実習生の方たちが航海の勉強に励んでおられました。
頑張れ!未来の船乗りさんたち。
再び階段を上って甲板に戻ってきたところが、通常航行時に船の航行を指揮する船橋の真下でした。
鋼材でがっちり作られた船橋ですが、側面の扉周りが木材で作られているところが面白いですね。
船橋の窓の上には、建造した住友重機械の名前などが刻まれたプレートが掲げられていました。
船首左舷側から船尾方向を見たところ。
帆船は本当にロープだらけなんだな、ということがよくわかる一コマです。
予備アンカー(イカリ)。2メートル近くはあろうかという鉄の塊です。
冒頭で取り上げた台風による座礁の時には、これを沈めてかつ海面から海底までの10倍近い長さ。
この鎖を垂らしていても、なお船体が流れるのを止められなかったということですから、大自然が牙をむいた時にはその猛威のエネルギーがどれだけ凄まじいかっていう話ですよね。
重い鋼鉄のイカリと鎖を巻き上げるための揚錨機。
巻き上げられた鎖は、甲板に空いた穴から下の階に送られて収納されます。
鎖はご家庭で使うようなものとはサイズが比じゃありませんですことよ?
ちなみに、揚錨機のグリップ近く貼られた「やさしく」のシールには、妙にほっこりしました。
船首から陸地を望んだところ。
海王丸は船首にも帆を張るようになっていますので、舳先の下には転落防止のネットが貼られています。
船首からほぼ中心線上に船尾を眺めたところ。
先ほどの左舷側からの写真に似ていますが、フォアマストが上下収まっていて横帆軸の配置がよくわかります。
マストの真ん中あたりにある航海レーダーには落下物除けのカバーが施されているのですが、こんなカバーがついてるのはすごく珍しくて、レーダー設置位置よりも上での作業が多い帆船ならではなのかなと思いました。
さて、ここで一通りの船内見学は終了となりましたが、最後に岸壁側から船首に回ってみます。
海王丸の船首で、航海の無事を祈り横笛を吹く金の女性像。
これは先代の海王丸に取り付けられていたものが、引退に伴い二代目海王丸に受け継がれたものだとのこと。
なお、姉妹船ともいえる練習帆船「日本丸」の船首には、同様に航海の無事を祈り手を合わせる女性像があり、海王丸のものは「紺青」、日本丸のものは「藍青」と呼ばれているのだそうです。
こういう安全祈願の女性像は、欧州の大航海時代やそれ以前の古くからの船にも見られるといいます。
船乗りの間では船を「彼女」など女性として表すことが多かったともいいますから、女性像の設置は船を愛する船乗りの気持ちの具現化であったのかもしれませんね。
終わりに
今回の海王丸の船内見学についてはここまでですが、今回書ききれなかった部分を含め、とても機能的な船であり、すごく美しい船だなというのが正直な感想です。
僕自身、本当に船が好きなだけであまり詳しくは知らなかった部分がたくさん見れたし、実際の帆船の中に入るというのも初めての経験でとても興奮しました。
その興奮のおかげで、船を下りてから「ああ、もう少しじっくりといろんなところを見ておけばよかったな」と後悔することにもなってしまったのですが(苦笑)
ここのところ、高知新港には海王丸だけでなく様々な大型船が寄港しているようです。
たまに海上自衛隊の護衛艦などがいることもありますし。
僕もまた情報を手に入れて、来れるようならできるだけいろんな船に会いに来ようと思います。
あなたも気が向いたときにでもたまにふらっと立ち寄ってみると、意外な船と出会えるかもしれませんよ?